どんな手術なの?

具体的には、人工歯根であるチタン製のデンタルインプラントを顎の骨に埋め込む手術です。ほとんどが局所麻酔手術ですが、緊張が強かったり高血圧がある人には鎮静薬を注射しながら行う静脈鎮静法などを使って行うこともあります。
難しい言葉で言うと生体材料を扱う手術になりますので、当院では、清潔な環境でかつ全身の状態をリアルタイムに把握できる手術室で行います。また当科は、顎顔面インプラント学会の指導機関でもあり処置は、経験豊富な学会の専門医が行います。
痛いんでしょう?
麻酔は十分に効きますので手術中の痛みはありません。麻酔が切れた手術後の痛みには、
痛み止めを使っていただきますが、それも通常2回使う位で痛みのコントロールは効きます。
また手術後には、患部を冷やしていただくと痛みだけでなく次の日の腫れもずいぶん治まるようです。
年を取っていても平気なの?
術前の検査を十分にしてから行いますので、心配ありません。インプラントは、歯の無いところに
入れる関係から最近では70歳代の方も増えています。
持病があるのですが・・・
大丈夫です。現在治療中の病気がある方は、その状態を術前に検査します。そのほかに術前に
問診といって現在の体調の聞き取りをしてそれに応じた検査を行います。その点は総合病院としての
利点を十分に生かせるのも特徴です。検査結果から治療が必要であれば、該当する専門医を
院内紹介し、治療(保険診療)によって改善してからインプラント手術を行います。
以前に、術前検査から貧血がわかり、治療改善後にインプラントを行った方もいます。これまでの
調査でインプラントを施行した患者さんの年齢層は50歳代以降が多くそのうち4割の方が何らかの
背景疾患を持っていることがわかっていますが、みなさん安全に処置を受けられています。
また私たちの300例近いデーターの中でも背景疾患がある方とない方との間でインプラントの
成績に明らかな違いがないという結果も出ていまので、必要以上に心配することもありません。
一本も歯がないんだけど・・・
出来ます。術前に審査を十分に行ってからが原則ですが、その状態から最低限のインプラントの
本数で入れ歯と組み合わせて用いるものやインプラントだけで歯並びを回復するものなど条件に
よって選択可能です。
保険診療で出来るの?
出来ません。保険適応ではないので、保険は使えません。自費診療のためインプラントに関する
骨移植、などの手術も全て自費診療の対象になります。そのため最初の相談の時点から相談料
(初診料金含む)として8000円頂戴しています。
高いんでしょう?
安くはありません。実際には術前審査に5万円、術前検査に1万円から4万円、その他にインプラント手術が1本25万円(同時手術の場合2本目からは、21万5千円)、その後上部構造によって9万円から13万円の費用がかかります。
例えば、通常多い片側の奥歯3本ないしは4本の欠損に対して、2本のインプラントを埴立させて
インプラントブリッジで再建した場合には、総額で約69万から78万円程度(検査費用別)かかります。
またどうしても骨量が不足していて、骨移植が必要な場合にはインプラント埋入前に骨移植(自費手術)をする場合があります。金額は高くても十分な満足が得られるはずです。
料金はいくらかかるのですか?
いずれも事前に骨移植が必要であるとか埋入するインプラントの本数、ブリッジや義歯といった上部に作る構造物の形態でもそれぞれ変わってきますので、審査説明のときにいくつかの治療パターン(案)を提示します。
失敗はすることはないですか?
ご心配は解ります。ただ失敗には理由があります。当科では、その中でもヒューマンエラーと呼ばれる人によって起こる失敗を最低限にするために能力、知識の研鑽、確認動作、記録については常に
注意をしています。そのため全例術前からエックス線写真、CTデータや手術記録に関しても後から
考察ができるように資料を保存しています。
さらにインプラントなどの手術に用いる器具はすべて使い捨ての清潔で安全なものを使用しています。また外科処置にあたるものは、学会認定の専門医、指導医が担当しています。ちなみに当科における脱落率は、270例中7例(3%)でしたが一般に世界的なレベルで言うと5~7%ですから良い成績といえると思います。脱落した3%のうち再手術を行って回復したものが95%という成績でした。
骨移植って?
移植が必要なのは、CTなどで審査した後インプラントを埋めたい場所にどうしても骨の量が十分で
ない場合です。当院では、骨を作る能力からβ―TCPという整形外科領域でも用いている骨の成分
でもある人工骨を補助的に使用するほか、骨移植のドナーとしては基本的に自分の骨である自家骨を用いています。
ドナーとしての骨は、大量に用いなければ近年口の中から採取するのがスタンダードとなっています。
この口の中の骨移植手術に関しては、口腔外科手術の中でもポピュラーなものですので、技術面、
経験症例数では全く心配ありません。
どのくらい保つの?
10年以上保っている方も大勢います。ただ忘れてはいけないのは、インプラント自体が生体材料で
あり基本的に異物ですので、一度身体が異物と認識すると拒絶反応(身体が異物を外に排除しようとする反応)に近い反応が出ます。
当科のインプラント埋入術後調査で、過去7年での術後の成功率97%、脱落率は3%でした。
成績は、良いとは言え成功率が100%ではありません。具体的な症状には、歯が抜ける時のように腫れや痛み、動揺、膿が出るなどです。原因である細菌自体は、口の中にいる常在菌ですが、このような反応は残存歯の歯周病菌の活動性と関係があると言われています。このようにならないようにインプラントを体に埋め込んだ後は、年に数回定期的に清掃状態の確認のためのメインテナンスを心がける必要があります。
どのくらいの期間でできますか?
CTなど撮影する術前審査に2から3週間。インプラント埋入手術をして下顎に入れたもので2ヶ月、
上顎に埋めたもので3ヶ月骨に結合させてから上ものの歯を作っていきますので手術から3から
4ヶ月で完成です。
すぐ咬めるようなものはできる?
近年保存不能な歯を抜いたらすぐにインプラントを入れて咬ませるような、抜歯即時インプラントも登場してきましたが学会でも数年間にわたる長期経過を見ていないので当科では、使用していません。
インプラントの種類って?
当科では、診療実績の一番古い世界的に老舗とも言えるブローネマルクインプラント、ストローマン
インプラント、アストラインプラントを中心に最近ではFDA公認の日本製マイティスインプラントも使用
するようになってきました。
インプラントのリスクって?
学会では局所的に、
1、インプラント部位の骨量不足(Buser 他 1994 / 1996; von Arx他 1998)
2、治療されていない歯周病は、歯周病に罹患した歯からインプラントへの交差感染の原因となりうる(MombelliとLang 1992; Cuneとde Putter 1996; Meffert 1993; Mombelli 1993; Gouvoussis他 1997)
3、インプラント部位の残根の存在
4、インプラント部位における局部的感染
があげられますし、リスクファクターとして
1、治療可能な口腔内粘膜の異常(Weinberg他 1997)
2、口腔乾燥症、唾液分泌の減少(抗細菌薬、洗浄) (WuとShip 1993)
3、ブラキシズム (Perel 1994; Rangert他 1995)
4、感染性疾患 (Weinberg他 1997)
5、インプラント部位に明らかに健康な骨が存在しない場合
と言われています。
さらに全身的には、
1、放射線治療歴(Epstein他 1997; Wong他 1997)
2、放射線治療後の不十分な待機時間(EsserとWagner 1997; Jissander他 1997; GranströmとTjellström1997)
3、重篤な糖尿病(Shernoff他 1994; Oikarinen他 1995)
4、出血性素因や薬剤誘発性の血液凝固不全のような出血性障害
5、ヘビースモーカー(BainとMoy 1993; Gorman他 '94; Bain '96; Haas他 '96; Lindquist他 '96)
があげられています。
さらに重度のリスクファクターとして
1、重度の全身性疾患(関節リュウマチ、 骨軟化症、骨形成不全症)
2、HIV(エイズ・ウィルス)による免疫不全症患者
3、アルコールや薬物の乱用
4、心理的または精神的障害を持つ非協力的な患者は治療方針などの順守という点で信頼性が低い(Hogenius他 1992)
5、身体表現性疾患
があげられています。ただ実際に適応があるか否かは、専門医が術前審査の時点で検討します。